頻尿トラブルなどに良いとされる「ノコギリヤシ」に関して、近年「薄毛」にも効果があるという噂が広がっています。「ノコギリヤシ」のエキスを抽出したサプリメントが手ごろな価格帯で販売されていますので、薄毛や抜け毛に悩む方にとっては気になるところかもしれません。
あるいは、既に試してみたという方がおられてもおかしくないと思います。「ノコギリヤシを使った薄毛対策は実際のところどうなのか?」、「何か確固たるエビデンスはあるのか?」など、ノコギリヤシと薄毛対策の関係性についてご紹介いたします。
ノコギリヤシとは?
ノコギリヤシは、アメリカ南東部が原産のヤシ科の植物です。細く放射線状に伸びる葉の方にではなく、オリーブ果実くらいの大きさの実には脂肪酸やフィトステロールが多く含まれており、古くから現地部族などに滋養強壮剤として利用されてきました。近年では、このノコギリヤシの効果に着目した研究も行なわれ、エキスを取り出したサプリメントなどが注目を集めています。
ノコギリヤシの効能は?
着目されている効能については以下のようなものです。
ノコギリヤシで着目されている効能
- 前立腺肥大症の改善…排尿障害や頻尿などの緩和
- 薄毛の改善…男性型脱毛症(AGA)などの薄毛や抜け毛対策
ノコギリヤシには「5αリダクターゼ(還元酵素)」の発生を抑制し、「ジヒドロテストステロン(DHT)」の産出を抑え込む働きがあると言われています。泌尿器系疾患もAGAなどの薄毛症状も、「5αリダクターゼ(還元酵素)」や「ジヒドロテストステロン(DHT)」と呼ばれる男性ホルモンの活性化が原因となっているため、このように一見関連性のない2つの症状であっても双方に効果があるのではと注目されているのです。
あくまでも健康効果として期待したいレベル…
ノコギリヤシの実際の効能については少しばかり懐疑的です。現地部族などに伝統的に利用されてきたことが私たちの関心や興味を呼んでいるという側面はありますが、医学的に立証されたエビデンスは確認できません。あまり身近にない植物の実(エキス)ということもあり、「なんだか効きそう…」というイメージが先行してサプリメントなどが普及しているようです。
明確な効果は確認できないという研究結果も…
2011年に行なわれたノコギリヤシに関する小規模実験(高齢男性369人を対象)では、ノコギリヤシを飲み続けた被験者と何の効果もない偽薬(プラセボ)を飲み続けた被験者との間で、泌尿器系症状の改善状況に大差は見られなかったという結果が報告されています(アメリカの医学雑誌「JAMA」に掲載)。
このようなことから、手に取るのであれば「効けばいいな?」くらいの軽い気持ちで利用するのが良いと思われます。大手通販サイトなどのレビューを確認してみると、「排尿障害」に関しては改善したとコメントを寄せる方もそこそこおられます。しかしながら、元々効果が実感しにくい薄毛対策としては「効いた!」と言い切っている人はほとんど確認できません。
私たちは「効くかも?」と思って飲んでいると、本当は単なる水道水であってもその効果を信じた反応を生み出してしまうケースがあります(=プラセボ効果)。これは決して否定すべき反応ではありませんが、やはりサプリメントはサプリメントという位置づけでうまく活用していくのが正しい付き合い方になるでしょう。当院は医療機関ですので、エビデンスの得られていないサプリメントよりも実際に医学的効果が立証されている「AGA治療薬」の方をおススメしたいと考えています。
「AGA治療薬」なら発毛効果を実感しやすい!
AGA治療薬で利用されているものは、主に「フィナステリド(プロペシア)」や「ミノキシジル」と呼ばれるお薬です。これらは効き目や作用が少なからず異なるものであり、両方合わせるのが発毛力を回復するためには効果的だと言われています(当院でも実際に2つのお薬を併せて処方することが多くなっています)。では、具体的にどのように違うのかを見てみましょう。
フィナステリド(プロペシア)
成分名は「フィナステリド」になりますが、お薬自体の製品としては「プロペシア」という名前で親しまれています。もしかしたら、「プロペシア」という名前なら聞いたことがあるという患者さまもおられるかもしれません。
フィナステリドの作用
前頭部や頭頂部に多く存在する「5αリダクターゼ(還元酵素)」の働きを阻害する
「5αリダクターゼ」は、善玉男性ホルモンの「テストステロン」と結びつくと、「ジヒドロテストステロン(DHT)」を算出してしまいます。DHTが作られると毛根が攻撃されて髪が成長しにくくなってしまうことから、「5αリダクターゼ」の働きを抑制することが薄毛や抜け毛防止には効果的です。端的に述べると、「薄毛化のメカニズムを内部的に防衛するもの」がフィナステリドということになります。
ミノキシジル
ミノキシジルの方は、育毛剤などのCMで度々耳にする成分かもしれません。これは元々「血管拡張作用」を利用した血圧降下剤として作られたものです。副次的効能として「毛が生える」という部分が着目され、改めて発毛能力に焦点を当てたものが「ミノキシジル」として登場した経緯があります。
ミノキシジルの作用
毛細血管を含めた全身の血流を改善し、頭皮環境上で毛根への栄養供給を促す
私たちの毛根は「毛細血管からの栄養供給」によって発毛を実現させています。どれだけ栄養面が潤っていても、血流に滞りが見られれば栄養素は毛根に届かず、髪は育ちにくくなってしまいます。このため、薄毛には運動習慣や頭皮マッサージが良いと言われるのですが、「ミノキシジル」はお薬の成分として実際に血管を拡張させる作用がありますので、髪への栄養供給が整いやすくなります。
このようなことから、特に生活習慣などで頭皮の血流に滞りが見られる薄毛患者さまにとって有効なお薬となるでしょう。フィナステリドの対比でご紹介するのであれば、ミノキシジルは「血流の滞りを物理的に押し広げて頭皮環境を改善するもの」ということが言えます。
なお、ミノキシジルの成分を配合した育毛剤などが広く市販されていますが、クリニックで処方される「ミノキシジル内服薬」と比べて育毛剤では配合比がかなり低く抑えられています。このため、明確な効果を期待する場合は専門医に相談するのが近道となります。
ノコギリヤシはお試しとして。薄毛治療は専門医に!
当コラムでは、ノコギリヤシに関して「広く期待されている効果」と「エビデンスが得られていない実態」についてご紹介いたしました。サプリメントは、過剰に摂取しすぎることはもちろん良くないまでも、そこまで副作用に神経質になる必要もありませんので、お試し感覚で軽く手に取る分には良いと思います。
ただし、薄毛治療として本気で活用するには論拠が弱いと言わざるを得ませんので、真剣に抜け毛や薄毛を改善したいとお考えの際は、どうぞ当院のような専門の医療機関をお訪ねください。
「無料カウンセリング」実施中
男性型脱毛症(AGA)の治療と聞くと、なんだか大掛かりなものを想像している患者さまもおられるかもしれません。一般的に広く行なわれている薄毛治療は、「内服治療」という形での有効なお薬の処方(上記でご紹介したようなお薬のご提供)になります。現実的にはご自宅で日々サプリメントを服用するのと同じような習慣付けになりますので、特にわずらわしく感じることもないと思います。また、お薬のほかに生活習慣の改善をアドバイスさせていただいたり、当院では必要に応じて最先端医療の「AGAメソセラピー」をご紹介することもできます。
各患者さまのご要望に合わせて最適なご提案をさせていただきますので、ご興味をお持ちの場合はお気軽に「無料カウンセリング」をご活用ください。医療機関として安心感のある対応をさせていただきます。