毛深い人ほどハゲるという話を聞いたことがある人も多いと思います。「いっそのこと、モジャモジャ生える体毛が薄くなってきた頭皮の方に流れてくれれば…」とお思いの男性も多いとは思いますが、そもそもこの「毛深いとハゲる」という噂にはなにか根拠があるのでしょうか。
あるいは、「毛深いわりにハゲている」という事実を目の当たりにした人が、少し揶揄するような形で広めてしまった話に過ぎないのでしょうか。当コラムでは薄毛専門のクリニックの立場からこの噂の真相を紐解きます。
そもそも毛深さって何?
毛深さは、その大部分が「遺伝」によって支配されるものです。この遺伝については、「毛穴の数に対して実際に毛が発現してくる密度はどうなのか?」というものです(毛穴の数自体の遺伝ではありません)。私たちの全身の毛穴の数は概ね500万個ほど(顔20万個程度、頭皮 10万個程度)あると言われており、これは妊娠6ヶ月くらいの胎児の頃に確定するものです。そして大人になって増えることもなければ、男女差も特にないと言われています。
この生まれ出た時点で確定している毛穴の中で、実際にそこから毛が生えてくるかどうかが人によって異なり、これがいわゆる「毛深さ」の印象となって捉えられます。「毛穴が多いから毛深いんでしょ?」と勘違いしていた人も少なくないと思いますが、毛穴自体の数には大きな個体差はなく、そこから生えるか生えないかで毛深さが印象付けられるのだと覚えておきましょう。
男性ホルモン「テストステロン」が毛深さをサポート
その毛穴から毛が生えるかどうかは遺伝的な影響を受けるとご案内しましたが、実際に体毛やヒゲなどの発現(発毛)をサポートしているものは「テストステロン」と呼ばれる男性ホルモンです。テストステロンはその大部分が睾丸で作られ、血管をルートとして全身を巡っていきます。毛深い体質が受け継がれている人はテストステロンの作られる量が多く、相対的に個々の毛穴に発毛を促す確率が高くなります(毛細血管を通じて、毛根に作用します)。
毛の生えない毛穴は何をしているの?
毛深さと薄毛の関係とは全く別の話になりますが、毛の生えない毛穴もあると知ると、「じゃあ何のために毛穴が存在するの?」と思う人もいるかもしれません。これについては、毛穴からは皮脂が分泌されていて、毛を生やす以外にも大きな役割があるとご理解ください。私たちの皮膚は、乾燥や外部刺激から肌を保護するために皮脂が保護膜のような形でバリア機能を担っています。毛穴はこのような皮脂の供給ルートになっているため、毛が生えていない毛穴があっても十分に存在意義があるということになります。
毛深い人ほど薄毛の人が多いような…の謎に迫る!
毛深さが男性ホルモンの「テストステロン」によってサポートされることがわかれば、毛深さと薄毛の関係性も理解しやすくなります。男性が陥りやすい「AGA」という言葉は、元々Androgenetic Alopeciaの略となっており、細かく訳すと「アンドロゲン(男性ホルモン)関連の脱毛症状」という意味になります。
男性型脱毛症(AGA)の言葉の由来
Androgenetic(アンドロゲン関連の) Alopecia(脱毛症状)
※アンドロゲンとは、男性ホルモンの総称のこと
日本語で使用される場合には、「男性型脱毛症」と訳されるのが一般的で少し因果関係が見えにくくなっていますが、本質的にはAGAは男性ホルモンを要因とした薄毛症状と言うことになります。毛深さも男性ホルモンの代表格「テストステロン」によってサポートされるものですので、やはり薄毛症状とも何かしらの因果関係がありそうだとわかります。では、AGAがどうやって発動してしまうのかを詳しく見てみましょう。
男性型脱毛症(AGA)が引き起こされるプロセス
男性型脱毛症(AGA)を引き起こしている主犯格は、ジヒドロテストステロン(DHT)と呼ばれる悪玉の男性ホルモンです。これは、元々善玉の男性ホルモン「テストステロン」が還元酵素の作用で変化してしまったものです。
毛根にこの諸悪の根源であるDHTが生成されてしまうと、毛髪の成長期が極端に短くなってしまい、髪1本1本があまり成長できないまま生涯を終えるという形になってしまいます。具体的な症状としては、弱々しい軟毛が増えてしまい、抜け毛が多くなることで薄毛が目立ってきてしまいます。AGAの発動プロセスについて、順を追って説明すると以下のようになります。
AGAの発動プロセス(メカニズム)
- 1. 血流に乗って全身を巡っている「男性ホルモン(テストステロン)」が、前頭部や頭頂部に存在する「5αリダクターゼ(還元酵素)」と結びついてしまう
- 2. 本来、発毛を促すはずの「男性ホルモン(テストステロン)」が、悪玉の男性ホルモン「ジヒドロテストステロン(DHT)」に代謝されてしまう
- 3. 毛根の奥にある毛乳頭付近に存在する「アンドロゲンレセプター」がDHTの影響力を受容してしまう
- 4. 髪1本1本が持つヘアサイクルが乱れて、本来通り髪が成長できずに軟毛化してしまう
・通常のヘアサイクル:成長期(2年~6年)→退行期(2週間)→休止期(3~4ヵ月)
・AGAのヘアサイクル:成長期(数ヵ月~1年)→退行期(2週間)→休止期(3~4ヵ月) - 5. 弱々しい髪(軟毛)や抜け毛が多くなってしまい、薄毛症状が顕著になってくる
ポイントとしては、男性ホルモンの代表格「テストステロン」自体は悪者ではなく、むしろ発毛を促すものであるにもかかわらず、その作用が現れる前に「5αリダクターゼ」と呼ばれる還元酵素と結合してしまうと、逆に毛髪を弱体化するDHTが生まれてしまうという点です。そして、この変化の着火剤のような役目を果たす「5αリダクターゼ」がどの程度前頭部や頭頂部に存在するかは、遺伝的な傾向として受け継がれるものだとわかっています。
毛深さは「薄毛に繋がる一要因を備えている」という理解が正解!
ここまでの情報を整理すると、以下のようになります。
毛深さと薄毛の因果関係についての情報整理
- 毛深さは遺伝であり、男性ホルモンの代表格である「テストステロン」が毛根に発毛の刺激をもたらして形成されるものである
- 男性型脱毛症(AGA)は、男性ホルモンを起因とした薄毛症状ではあるが、実際にはテストステロンではなくて、それが変化した「ジヒドロテストステロン(DHT)」によって引き起こされている
- テストステロンからジヒドロテストステロン(DHT)への変化は、還元酵素「5αリダクターゼ」によってもたらされる(テストステロン+5α→リダクターゼ→DHT)
丁寧に情報を整理していくと、元々毛深くて「テストステロン」が多く全身を駆け巡っていたとしても、それが必ずしも頭皮環境上でジヒドロテストステロン(DHT)に代謝されてしまうわけではないということがわかります。先にもご紹介したように、テストステロンからジヒドロテストステロン(DHT)への変化媒体となるのは「5αリダクターゼ」ですので、むしろ毛深くなくても「5αリダクターゼ」が前頭部や頭頂部に多く存在していれば(遺伝的にそのように受け継がれていれば)、AGAを発症してしまう可能性が十分にあるということになります。
ただし、仮に同じ総量の「5αリダクターゼ」が受け継がれている男性が二人いれば、元々テストステロン値が高い「毛深い男性」の方がより多くのDHTを算出してしまうのも事実であるため、毛深い方が薄毛が強く出やすいという傾向も事実として考えられます。体毛が毛深い男性でかなり薄毛が顕著な男性もおられますが、これには上記のように「元々毛深い人で、なおかつ「5αリダクターゼ(還元酵素)」を多く受け継いでいる場合に見られる傾向」だとまとめることができます。
毛深ければ必ずしもハゲるとは言い切れませんが、薄毛症状が出てきた場合にはその薄毛傾向が顕著に進行しやすい点は心に留めておいた方が良いでしょう。
毛深さから薄毛を危惧するより、頭皮上の軟毛チェックを!
当コラムでは、「毛深さと薄毛の関係」について丁寧に解説いたしました。結論としては、「毛深さ=薄毛」とは言い切れませんが、毛深い男性が薄毛を発症した場合には顕著になる可能性が高いという点がポイントになります。しかしながら、薄毛症状にターゲットを絞った場合、毛深さそのものよりもその人に「5αリダクターゼ(還元酵素)」の量が多く受け継がれているかの方が重要であり、それを外から推し量るにはやはり毛髪の状態をチェックするのが一番です。「生え際(特に左右の剃りこみ箇所)の後退」や、「頭頂部の毛髪の状態」、あるいは「抜け毛の本数」などを定期的に確認していただき、これらに危険信号が灯ったら特に毛深い男性ほど早めに専門の薄毛クリニックを訪ねるのが適切な対処法になります。
ぜひ、当院の無料カウンセリングへお越しください!
当院には、薄毛や抜け毛の分野に特化した専門医が複数在籍しております。個々の患者さまのお悩みを「無料カウンセリング」という形でお伺いし、医学的にエビデンスのある最適な解決策をご提案しております。気になり始めた薄毛症状が、「AGA症状として遺伝的に発動してしまっている可能性の高いものなのか?」、あるいは「生活習慣の改善で少なからず回避できるレベルのものなのか?」など、個々の状況を客観的に専門家目線で判断させていただきます。
治療をスタートする前のカウンセリングまでは無料にてお受けいただけますので、どうぞお気軽にご活用ください。皆さまのお越しをお待ちしております。