お薬の服用によってAGA治療を開始すると、それまで抜けていた量以上に毛髪が抜けるという「初期脱毛」が起こることがあります。この段階で患者さまの多くは強いご不安をお持ちになりますが、これはお薬が効いてきている証ですので心配ご無用です。なぜ初期脱毛が起こるのか、初期脱毛はいつ頃まで続くのか、このあたりの疑問について解説いたします。
男性型脱毛症(AGA)のメカニズムのおさらい
「初期脱毛」の発生を理解するためには、AGAのメカニズムについてある程度理解しておく必要があります。「そもそもどうして薄毛になってしまうのか…?」イラストを見ながらおさらいしておきましょう。
AGAのメカニズム
- 1. 血流に乗って全身を巡っている「男性ホルモン(テストステロン)」が、前頭部や頭頂部に存在する「5αリダクターゼ(還元酵素)」と結びついてしまう
- 2. 本来、発毛を促すはずの「男性ホルモン(テストステロン)」が、悪玉の男性ホルモン「ジヒドロテストステロン(DHT)」に代謝されてしまう
- 3. 毛根の奥にある毛乳頭付近に存在する「アンドロゲンレセプター」がDHTの影響力を受容してしまう
- 4. 髪1本1本が持つヘアサイクルが乱れて、本来通り髪が成長できずに軟毛化してしまう
・通常のヘアサイクル:成長期(2年~6年)→退行期(2週間)→休止期(3~4ヵ月)
・AGAのヘアサイクル:成長期(数ヵ月~1年)→退行期(2週間)→休止期(3~4ヵ月) - 5. 弱々しい髪(軟毛)や抜け毛が多くなってしまい、薄毛症状が顕著になってくる
※「5αリダクターゼ」の総量や、アンドロゲンレセプターの感受性の高さについては遺伝的に受け継がれやすくなっています。
このようなことから、一度上記のようなAGAメカニズムが発動してしまうと、残念ながら放置していても薄毛は改善されない…と言われています。
AGAのお薬がもたらす作用とは?
AGAは強く遺伝的影響を受けて発現してしまうため、治療ではヘアサイクルに悪影響を与えるDHTを遮断することが不可欠だと言われています。また、髪の成長をサポートするためには、頭皮環境(血行の良さ)なども重要になってきます。このため、AGA治療のお薬は大きく分けて次の2つの側面から発毛力を復元、または強化していくものとなっています。
AGA治療薬が持っている作用と効果
主に「フィナステリド」というお薬が持つ作用
「5αリダクターゼ(還元酵素)」と「男性ホルモン(テストステロン)」の結びつきを抑制する
→DHTの産出を抑えてヘアサイクルの乱れを絶ち、薄毛要因を遮断する
主に「ミノキシジル」というお薬が持つ作用
「血管拡張作用」によって血流を改善し、各毛根が毛細血管から栄養分を受け取りやすくする
→本来的な発毛力を強化する
AGA治療で「初期脱毛」が起こるワケ
男性型脱毛症は、悪玉の男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)の影響を受けて発現してしまうものであるため、治療ではDHTの影響力を遮断したり、発毛力そのものを強化しようと試みます。ところが、薄毛お悩みを抱えている男性の場合には、既に毛髪においてある程度の「軟毛化」が想定されています。つまり、「今生えている軟毛がお薬によってどうなるのか…?」を考えていけば、初期脱毛の謎が解明できるということになります。
悪玉司令官DHTに洗脳されてしまった毛根(軟毛)の行く末…
DHTによって既に成長期が短くなるように書き換えられてしまった毛根については、DHTが去ったからといってその場で成長期が回復していくわけではありません。軟毛化してしまっているということは、もうプログラム的に書き換えられてしまっているので、DHTが去って善玉の男性ホルモンであるテストステロンが動き出しても、その影響を受け取るのは軟毛の下にある新たな毛髪ということになります。
つまり、簡単に考えると「親分を失って方向性を見失ってしまった軟毛についてはもう抜け落ちる未来しか残されていない」ということになります。
既に弱体化している軟毛たちは「新たな芽生え」によって押し出される
AGA治療薬の作用によって、本来的なヘアサイクルが回復したり発毛力が強化されてくると、軟毛の下に眠る「新たな芽生え」の動きによって今ある軟毛は抜け落ちやすくなります。これがAGA治療を開始してしばしば見られる「初期脱毛」と呼ばれる症状の正体です。
このように、お薬の影響を受けて毛根が元気に動き出し始めると、その結果として一定の脱毛作用がもたらされるケースがあります。もうお分かりの通り、これは正真正銘「お薬が効いてきた!」という証になりますので心配はご無用です。しばしの間ご辛抱いただき、その次に現れる本来的な発毛力にご期待ください。
AGA治療での「初期脱毛」に関するQ&A
AGA治療開始後の「初期脱毛」については、薄毛お悩みを抱えておられる患者さまにとって不安材料に他ならないと思います。良くお寄せいただくご質問をいくつかご紹介しますので、予め不安要素を解消しておくと良いでしょう。
「初期脱毛」は誰にでも起こるの?
AGA治療において、明確な「初期脱毛」が生じるかどうかは患者さまによって異なります。これは既にある軟毛の量や、どの程度DHTの影響を受けてヘアサイクルが乱れているのかなどによっても異なってくるからです。
また「どのお薬を使用するか」や「服用いただく分量」、「そのお薬との相性」などによってもやはり初期脱毛の現れ方は異なってきます。「初期脱毛」が起こらなければお薬が効いていないということでもないため「起こり得る一つの作用」といった感覚で受け止めておくと良いでしょう。
「初期脱毛」は治療後いつ始まり、どのくらい続くものなの?
初期脱毛が起こり始めるタイミングは患者さまによって様々です。一般的には、3週間~1ヵ月程度で起こり始め、3ヵ月間くらい続くことが多くなっています。初期脱毛が起こっても、常に抜け続けるというわけでもなく、抜ける量もその時々で変化するのが通常です。これは、軟毛化した毛髪の元々のヘアサイクルなどと関係があると考えられています。
初期脱毛の発生と終焉(時間的な整理)
- 初期脱毛が生じるタイミングの目安
3週間~1ヵ月程度で抜け毛の量が増えてきたと感じるケースが多い - 初期脱毛の継続期間の目安
患者さまによっても異なるが、通常3ヵ月くらい続くことが多い(ただし、常に多量に抜け続けるというわけでもない)
「初期脱毛」が起こった場合に注意すべきことは?
ご説明させていただいた通り、初期脱毛はお薬が効いているという証拠のようなものになります。このため、初期脱毛が生じたからといって何か慌てて対策する必要などはございません。強いて言えば、発毛力をより強化できるように、食生活や睡眠習慣、適度な運動などを意識した生活を心掛けていただきたいと思います。当院で治療を実施されている患者さまについては、治療開始後のご相談やサポートも実施しています。お気軽にお問い合わせください。
薄毛治療は早期治療が肝心
当コラムでは「初期脱毛」についてご紹介しましたが、もしも「初期脱毛」を恐れてAGA治療の開始を躊躇するのであれば本末転倒と言わざるを得ません。AGAによる薄毛症状は、前述のとおり「遺伝的な傾向」を帯びて発現してくるものなので、早めに対策すればするほど薄毛影響を回避しやすくなります。
当院では、随時「無料カウンセリング」を実施していますので、どうぞお気軽にご相談ください。医学的に有効なお薬で各患者さまの頭皮環境にあった治療をご提案させていただきます。